2016年1月12日火曜日

完成度の高い名作山岳小説『神々の山嶺(いただき)〈上〉』感想

  • 公開日:2016年01月12日
  • 最終更新日:2016年01月19日

はじめに


あと3ヶ月もすれば登山の季節となります。
登山に対するテンションを徐々にあげていこうと山岳小説を手にとって読みました。その感想を記載した記事です。

あらすじ


登山カメラマンである深町誠(ふかまちまこと)は、エヴェレストの遠征に失敗し、打ちのめされていた。登山仲間を二人失い、自分一人だけ取材と偽り日本に帰らず、しばらくネパールのカトマンドゥで滞在していた。そこでぶらりと立ち寄った店で偶然カメラを発見する。
そのカメラは登山史上最大の謎であるマロリーアーヴィンのエヴェレスト登頂の謎を解くことができる可能性のある貴重なカメラだった。

しかし、情報を嗅ぎまわるうちにカメラは何者かに盗まれてしまう。カメラを探しに出た深町は、酒場でビガール・サンという男に出会う。そこでのやりとりの後、深町はビガール・サンが伝説の孤高のクライマー羽生丈二(はぶじょうじ)ではないかと推測する。

日本に帰った深町は、調査を続け、ビガール・サンが羽生丈二だと確信することになる。
さらに、深町は羽生の過去を調べていくうちに、羽生に興味を抱くようになっていく。
羽生は天才クライマーとして知られていたが、人と馴染めず職場に長く定着できないでいた。彼の生活の中心は山であり、羽生は山でしか生きることのできない不器用な男であった。
しかし、ある年、周りからも孤立気味だった羽生を尊敬していた後輩の岸を冬の谷川岳で失ったことで、羽生は以前のように頻繁に登山をしなくなっていた。さらに羽生は、羽生を超える若き天才クライマー長谷常雄の存在を追いかけ、エベレストに挑戦し失敗した。そして、羽生はエベレスト登頂に失敗してから行方不明となっていた。

ある日、深町は、羽生を調べていると、岸の妹である岸涼子とコンタクトを取ることになった。
深町は岸涼子から羽生丈二の手記を受け取る。手記の中身はグランドジョブスの登攀記録であった。 そこに記されていたのは、遭難状況での羽生丈二のなまなましい心情であった。
長谷を意識し、死んだ岸を思い、涼子に懺悔する山に生きる不器用な男が見せた死の直前の本音だった。

深町は、さらに羽生に興味を抱いて調査を続けた。そして羽生がネパールにとどまっている理由が 「冬季エヴェレストの南西壁の無酸素単独登頂」だと目星をつけ、ネパールに再び足を運ぶことにする。

再びネパールで羽生を探しはじめた深町は、羽生と繋がりのあるアン・ツエリンを偶然にも見つける。しかし、アン・ツエリンを見失いホテルに戻ると、そこでネパールに飛んできた岸涼子に出会う。羽生に会うためにここまで来た涼子に驚きながらも、深町はそんな涼子に惹かれている自分に気づく。

羽生の情報を手に入れた深町と涼子の元に、アン・ツエリンが突然あらわれる。アン・ツエリンは涼子に羽生のことを忘れて日本に変えるように告げるが、深町と涼子は羽生に会うために町を出ることにする。

ぶらりと町に出た二人だが、まわりをぶらつくといった涼子が夜になっても帰ってこない。すると、羽生から電話がかかってきて、深町と羽生はついに出会うことになる。
羽生から涼子が誘拐されたことを告げられ、取引の電話に応じる。その後のやり取りの中で、羽生が冬季エヴェレストの南西壁の無酸素単独登頂」をやるのだということを引き出す。

マニ・クマールから犯人達を教えた貰った深町と羽生は、誘拐の件を知っているナラダール・ラゼンドラに共に会いにいくことにする。(下巻に続く)

感想


世界最高峰のエヴェレストを舞台にした物語です。
冒険小説としての完成度は高く、登山を題材にした物語の中でも屈指の作品です。

エヴェレスト登頂の謎とされているマロリーとアーヴィンの史実をミステリー的な要素に据え、深町と羽生を中心に物語を構成させていく展開は、さすがに力量のある夢枕獏氏の作品です。氏の有名な作品である陰陽師シリーズを想起させるミステリー的な要素も含まれていて、読者を飽きさせない作品に仕上がっています。

登山に興味があるひとはもちろん、登山に興味が無い人でも楽しく読める作品に仕上がっています。

そして、この作品は2016年3月12日から岡田准一の主演で映画が公開されることになっています。
タイトルは少し変更され「エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)」となっています。

深町誠(ふかまちまこと)を岡田准一が演じ、羽生丈二(はぶじょうじ)を阿部寛が演じることになっています。
エヴェレストをテーマにした広大なスケールの作品なので、今から公開が楽しみな作品です。

久しぶりに映画館で見たいと思っている邦画でもあります。
映画を見たら、その感想もブログに載せたいと思います。

以上です。(神々の山嶺(いただき)〈下〉』の感想に続きます)


マウンテンチャンネル

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