人材不足が招く欠陥システムの量産
さて、2015年問題がなくとも、IT業界は常に人不足である。
人が少ないから業務時間は長くなり、仕事は過酷さを増し、人の入れ替わりが激しくなる。
人がいないのだから、人材派遣は悪だと国や国民が叫んだところで、人材派遣は必要悪で栄える。完全なる負のスパイラルだ。
僕は人買いビジネスが大嫌いだが、プロジェクトの納期がタイトで明らかに間に合わない場合は、やはり協力会社のエンジニアにヘルプを依頼することになる。納期を伸ばす交渉もするがやはり限界がある。これが、国や大企業の絡む大型案件ならなおさらだろう。彼らは優秀だが、前時代的なビジネスマインドだ。とりあえず誰でも良いから人をかき集めるようになるのは当然だ。
もちろんただでさえ人材不足な状況なのだから、ろくな人材が集まらないのは自明の理だ。さらに、どの会社もエース級は手放さない。内製のシステムを構築している会社であれば、エース級は社内にいてもらわないと困るのだ。こうして巨大プロジェクトのシステムの構築は迷走していく。
国や巨大企業が発注する巨大案件プロジェクトの開発現場の手法は、いわゆるウォーターフォールと呼ばれる手法を用いられることが多い。最初からビジネスの要件を100%満たせる仕様にまとめるあげるのは不可能なのに、この手法が採用されるプロジェクトは多い。理由はいつも同じだ。それは「(炎上した)実績があるから」である。
そして、引き継ぎに次ぐ引き継ぎと、伝言ゲームで伝わってきた不思議な設計書が実装者の手元に落ちてくるのだ。
そしてかき集められたプログラマー達は、その摩訶不思議な仕様書を眺めながら心にある疑念を抱きながらコードを書くのである。
「誰がこんなシステムを使うんだ。使いにくいにもほどがある」
仕様書に記載されているのは、一瞥しただけで使いにくいとわかるシステムだ。だが、彼らは仕事として割り切る。というか割り切る以外に方法はない。彼らは実装するのが主な仕事なのだ。悪臭のする香水を作れと言われて不思議に思ったとしても、その商品を作るのがプロだ。そしてその商品を売るのが営業で、使うのが運用だ。こうして欠陥システムが作られていくのである。
だが、さらにたちが悪いのはこの先である。前回、ダーウィンの言葉を引用させてもらった。
「唯一生き残るのは、変化できる者である」
何度もいうがこの言葉は絶対だ。きっとそれは未来でも変わらない。
集められたプログラマー達の中には辞めていく者も多いが、残る者も多いのだ。そう、彼らは「変化できる者」なのだ。
だが、その変化は悲惨な変化でもある。それは、「こういう仕様で、こういうシステムなのだ。」という変化を彼らは遂げるのだ。
彼らが環境に慣れた頃、新しい機能を実装するためにさらに多くのエンジニアが合流する。合流した彼らは開発環境を構築し、一通りの機能を触ってみる。そして眉をひそめて尋ねるのだ。
合流したエンジニア「このシステムは操作と手順を覚えるのが大変ですね(皮肉)」
変化したエンジニア「大丈夫ですよ。すぐ慣れます。慣れです、慣れ(苦笑)」
合流したエンジニア「うーん、ここの仕様がよくわからないんですけど」
変化したエンジニア「大丈夫ですよ。みんなよくわかってませんから。もちろん僕もわかりません。こういうもんなんです」
現場レベルで作業をしたことのないエンドユーザー様やコンサル様にはわからないだろう。これは経験した者にしかわからない。
だが、これは現実によくある話なのだ。というより巨大プロジェクトの5割の現場はこうである。まるで、IT業界には台本が用意されているかのように、このコントは上演される。
こういった現場で働いたことが無い人も話には聞いたことはあるかもしれないが、本来の現場レベルは話に聞く100倍ひどいと思って間違いない。
こうして欠陥システムが次々と制作されていくのだ
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