記事概要
不定期更新のコラム記事。
総務省の情報通信審議会は、IT人材を10年間で200万人に倍増する報告書案をまとめた。
IT業界が慢性的な人材不足なのは確かだが、この政策には疑念を抱く。
毎日休みなく夜遅くまで頑張っている政治家の皆さんに文句は言いたくない。だが、さすがに言わざるをえない。
なぜ、何度も同じ間違いを繰り返す?
人が集まらない理由をきちんと考えているのだろうか。そもそも、
人を増やして解決する問題なのか?
結果には必ず原因がある。
人を増やしても、IT業界の人材不足問題が解消しないのは、これまでの対策で効果がないことから答えは出ている。
つまり、IT業界は、人を増やすことで人材不足の解消はできない業界なのである。
「人を増やす」
この安易な解決方法の提示は、IT業界に限らない。
人口減少にも移民を入れるべきだという意見があるし、日本の財政問題も税金を増やすことで解決しようとしている。
こんな誰でも出せる解決方法を提示してもらうために、我々国民は税金を払い、議員に3,000万もの年収を支払っているわけではない。
ググれば高校生でも導ける回答に3000万の年収は高すぎる。300万が妥当だ。
問題提起は適切なのか
私は情報通信審議会に属してはいないので、どんな話し合いが行われているかはわからない。だから、
間違ったデータを集めたパワーポイント資料を見て、無駄な議論をしているのではないか。
と疑ってしまう。
当たり前だが、人材不足の会社の経営者に聞けば、「人材が足りない」という答えが返ってくる。
仕事がない会社の経営者に聞けば、「仕事がない」という答えが返ってくる。
1+1=2くらい明確なことである。
表面的な結果から安易な解決方法を見出すことほど無駄なことはない。
お金がないからアルバイトをしよう。将来が不安だから貯金して備えよう。
情報通信審議会の報告結果はまさにこれと同じである。
メジャーリーガーのダルビッシュ選手が言う
無駄な方向への努力
である。
IT人材の解決方法
IT人材不足の解決に必要な議論は、
- 必要とする技術を身につけるのにかかる時間はどれくらいか
- どのジャンルのどのくらいのレベルの技術者が何人必要か
である。
どれだけ頭数を増やしても業務をこなせる能力がなければ意味がない。今のプログラムはマンパワーで解決できるレベルにない。
例えば、錦織選手があと3人いれば日本はテニス王国になるからといって、国がテニス人口を3倍にしても意味がないことはわかるだろう。今やってることは全く同じである。
ディープラーニング、つまりAIの技術者が欲しいなら、その人材には統計、ベイズ、アルゴリズム、線形代数、微積の知識が前提として備わっている必要がある。pythonでプログラムが書けることも必要だ。データの集計にはSQLを使うだろう。
何が書いてあるかよくわからないかもしれない。だが、安心して欲しい。ほとんどの人はわからないはずだ。エンジニアでも機械学習を理解できるのは10%というところだろう。
つまり、大切なのは質を備えた人材である。
必要な議論は、そういった人材を育てるのに、どれくらいの期間の教育が必要で、どういった環境を用意するべきなのかということである。
今のやり方では、人材不足はさらに加速するだけだ。増えた100万の人材のうち、欲しい人材は1万程度で、同じことの繰り返しになるだけだ。
まとめ
なんでも量で解決しようとするのは、古い世代の悪い習慣だ。
たとえ、じゃぶじゃぶに刷った金を国民に配っても、ほとんどの国民は将来のためにと貯金するだろう。
多くの移民を招きいれても、未来の基軸産業で活躍できる人はごくわずかだろう。
情報化時代で周りには多くの情報であふれている。情報からノイズを取り除いて、適切な判断を下すのは我々エンジニアでも難しい。
だが、難しくても我々は時代にあった選択をしなければならない。そして、その力は、政府にこそ最も求められているのである。
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