2015年8月4日火曜日

センスとは知識の集積である - 書評 - 『センスは知識からはじまる』

  • 公開日:2015年08月04日

センスについて


センス。これほど曖昧模糊として数値化しにくい概念はないでしょう。
でも確かに世の中にセンスの良し悪しは存在し、人々は無意識にセンスを判断しています。

では、センスとは一体何なのでしょうか。それを体系化したのが本書です。

作者は『くまもん』等を生み出したヒットメーカーの水野学氏。彼のセンスについての知見は、センスについてコンプレックスを持っている人に役に立つと思います。

センスの測り方


センスのいい/悪いを測るには、普通を知ることが大切である。
普通という「定規」であらゆる事象を測ることで、さまざまなものを作りだすことができるようになる。
と作者は述べています。普通を知る、つまり比較可能なものさしを知識としてもつことが大切ということです。

センスを磨くには


センスとは知識の集積です。では、センスの知識を身につけるにはどうしたらよいのでしょうか。それは以下の通りです。

  • 「他と全然違うもの」を考えるのは間違いである。「誰でも見たことのあるもの」という知識を蓄えることが大切である。
  • 単に流行の情報を集積するだけではいけない。客観情報を集めるのが重要。
  • センスに自信がない人は、自分が、いかに情報をあつめていないか、情報が少ないかを自覚する必要がある。 瞬時に物事を最適化出来る人も、感覚でなく、膨大な知識の集積の結果である。

一番大切なことは、センスとは研鑽によって誰でも手にできる能力ということを理解することです。
そして、日々の生活の中でセンスを磨く習慣と思考を取り入れることで、センスは磨かれていきます。

センスあるプロダクト


センスあるプロダクトとは、ヒットするプロダクトのことです。ヒット商品を生み出すにはどうしたらよいかというのは、あらゆる企業にとって永遠の課題です。本書では以下が、センスのあるプロダクトを生み出すコツだと述べています。

  • 商品というアウトプットは「もの」であり、視覚に左右される。 どんなにいい仕事をしていても、どんなに便利なものを生み出したとしても、見え方のコントロールが できていなければ、その商品は人の心に響かない。
  • ものをつくるには「あまり驚かないけど売れる企画」に注目するといい。iphoneは固定電話、携帯電話の変形。AKBはおにゃん子クラブ、モーニング娘の変形。過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えておくことが、新たに売れるものを生み出すには必要不可欠である。
  • 人は新しいものに接した時、過去のものや過去の知識に照らしあわせて考えるのが自然である。みんなが感心するプロダクトは、ある程度知っているものの延長にありながら、画期的に異なっているもの。つまり、「ありそうでなかったもの」である。

ものを作るときは常に心がけていたい考え方です。

センスの精度を高める


センスの精度も常に高めていく努力が必要です。精度を高めるには以下の三点に注力すると効果的です。

  • 王道のものを知る。なぜなら、王道のものはすでに「最適化されている」と言い換えることができるから。
  • 流行っているものを知る。それには、インターネットよりも雑誌で知識を得るのがオススメである。精査された情報を得るには、インターネットより雑誌が良い。
  • 共通項や一定のルールがないかを考える。

より貪欲にセンスを高めたい場合は、以下にも取り組むと良いでしょう。

  • デザインを構成する色と文字を学習する。
  • 「誰が、どんなときに、どんな場所でつかうのか」を設定する。対象を具体的にイメージできるようになるためには、雑誌を読むのが有効。
  • 好き嫌いでものを見てはいけない。好き嫌いは客観と対極にある。

センスのクオリティを高めるには、感覚という言葉に逃げずに説明できるようにすることも重要です。それが精度の高いアウトプットであり、商品を売れるものへと育てる最良の道となります。

まとめ


センスは難しい概念です。私はこの本を読み終えた後、たまたま川辺で打ち上げ花火を眺めていました。

次々と打ち上げられる花火を見ていましたが、私はこの打ち上げ花火に対しセンスが良いなとは思いませんでした。しかし、センスは感じませんでしたが、趣がある、夏だなと思いました。

私達は普段から無意識的にセンスのあるなしを判断します。例えば初めて取り組むスポーツで、一人だけ上手な人がいれば、「あの人はセンスがある」という判断を下します。平均より覚えの悪い人がいれば、「あの人はセンスないな」となります。

私達がセンスという言葉を使うとき、数値化できない事象の判断に使うことが多いように思います。そして、作者も述べていますが、例えば野球でも数値が良いからセンスが良いと判断を下すわけではありません。センスとはあいまいさを含んでいる言葉なのです。

急速なコンピューターの普及であらゆるものがデジタル化されました。しかし、未だにはっきり体系化されていないのが「センス」という概念なのではないでしょうか。本書では作者がその「センス」について定義化しています。作者の実績から判断すると、彼は確実にセンスのある人です。
そんな彼の出した結論は、センスとは知識の集積であるということです。

作者の主張が正しいかどうかはわかりません。でも、彼の定義したセンスの方法論は、私達にも役立つのは確実だと思います。
なぜなら、彼の定義したセンスを高める方法は、古来より伝わる芸事を極める手段と似通っています。つまり、人が物事を極めるためには、スポーツであれ、学問であれ、そしてセンスでさえも、膨大な知識と実践のトライアンドエラーが必要になるのです。

莫大なトレーニングが天才を生み出す。センスを磨くのも、結論はそこに落ち着くようです。

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